有給休暇が取りづらい本当の理由は?

有給休暇って取りづらいですよね。みんな周りの反応が気になるようです。

同僚の反応気になり「有給」取れない 社会人の3割(ITmedia)

ビジネスパーソンの33.6%が、「職場に休める雰囲気がないため、有給休暇を取りづらい」と感じている――格安スマホなどを提供するBIGLOBEの調査で分かった。

このほか、休暇を取りづらい理由として「自分が休むと、同僚が多く働くことになるから」(22.9%)、「上司・同僚が有給休暇を取らないから」(22.3%)など、周囲が気になるという意見が目立った。

photo有給休暇を取得しづらい理由

「上司・同僚が有給休暇を取らないから」と答えた人を年代別にみると、20代の若手に多く、32.0%を占めた。また「業務対応が発生するかもしれないから」と考える管理職は28.0%に上り、仕事に対する責任感が強さから有給休暇を取得しない人が多いことが分かった。

まず上司に言いにくい。別に断られたり、理由を問い詰められたりするわけでもなくても言いづらい。ものすごく罪悪感がありますよね。よく分かります。

上記の表を見ると、空気が…、同僚が…、上司が…、罪悪感、勇気、…などなど。空気感で有給休暇が取りづらい環境にあるようです。

空気って何でしょう?空気?迷惑が掛かるかも知れないって思いですよね。迷惑って、つまり仕事が回らないこと。自分ひとりが休んだせいで、仕事が進まず納期が遅れる。それを避けるために上司や、同僚が自分の分まで働かなければいけない。一人欠けた分を補うだけの人員なんてある訳ないから、業務の閑散な時期を狙って休むしかない。小さな会社なら仕方がない。いや、大企業でも一部署の人数なんて少ないから代わりの人間なんていなくて、休むに休めない状態になる。上司も経営者も従業員を休ませたいと思っている、そういうホワイト企業であっても人員が潤沢にあるわけじゃないから休みにくい。それが空気として休めない雰囲気を作っているのではないでしょうか。

でも本当に空気だけが原因なのでしょうか。

有給休暇取得率が高い欧米の企業ってどうなんでしょう。欧米にも中小企業はあって、代わりの人員なんていない会社など山ほどあると思うんですが。どうして休めるんでしょうね。実際に欧米の企業で働いた人の意見が聞きたいのですが。おそらく、仕事が回らなくても休むんでしょうね。従業員が休んでいて、実際に顧客に対する納期が通常より長く掛かったとしても、それが当初の予定通りで顧客との約束があればイレギュラーに長い納期が許されるんじゃないでしょうか。通常は納期1か月だけど、従業員がバカンスで休みだから今月は2か月の納期になりますって、それがまかり通ってるんじゃないでしょうかね。

日本でもお盆やGW、正月はたいていみんな休みます。そこで納期が1週間伸びることは誰もが承知のことですよね。今では中国の春節で中国からの輸入が止まることも理解されてますね。春節だから仕方がない。それを見越して発注しなかった方が悪いみたいな。みんなが理解してれば仕方がないで済むんですよね。社会的なコンセンサスがあれば特に問題は起きません。バカンスに行く人間のせいで仕事が止まる、その社会的コンセンサスがあれば何の問題もないんですね。

だからと言って、一中小企業にそれはできないと思います。例え大企業でも顧客に対して「社員がバカンスで…」とか言えないですよね。政府も有給休暇取得率の向上のような施策は立てられても、納期を伸ばせなんて企業に言えないです。社会的コンセンサスの形成なんて難しく、大々的キャンペーンや、啓蒙活動が必要なものです。

でも先進的で、力を持ってる大企業なら顧客の要望さえも無視してパラダイムシフトを起こせるかもしれません。例えば電通のような。オフィスの消灯を22時にするなんて何の対策でもないですよ。従業員のバカンスを理由に納期を伸ばす。こういうのが対策ですよね。身銭を切って社会的変革をもたらす。どうでしょうか。

有給休暇の取得のしづらさは、従業員の意識の問題ではありません。経営者の、仕事に対する価値観と、人を雇っている、人の人生の大半の時間を受け持っている、その責任感の問題です。会社とは仕事を通じて社会に貢献するものです。多分どこの企業にも似たような文言が飾ってあると思います。その「社会」に従業員や、経営者自身が含まれておらず、顧客でさえ金銭的な利益の対象でしかない、そういった矜持のなさ、仕事の哲学のなさが目前の利益や納期のみ優先し弱者(奴隷のように使える従業員)にしわ寄せが行って休めないと言った形で表れてきています。

行政の規制だけではこの問題は解決しません。規制の強化で、神の見えざる手が働く頃は力ののない企業や労働者がケガをした後です。経営者に倫理観が求められます。でも今の経営者に倫理観なんて高尚なものを求めるのは無理なんじゃないでしょうか。会社に過大な期待をしてはいけません。だからこそ自立できる道を探しましょう。