退職金とは労働力の提供を条件とした保釈金

定年まで働くとたいていの会社では退職金がもらえます。サラリーマンとしては結構大きな額ですね。でも定年より早く辞めるとほとんどもらえません。10年、20年働いても雀の涙程度です。だから会社を辞めるのを躊躇する人もいます。これってどうなんでしょうね。

退職金制度とは

退職金

退職金は本質的には賃金の後払いであり、終身雇用制を基調とした日本においては永年勤続を奨励する意味もあり広く行き渡っている制度であるが、法定された制度ではなく、退職金制度を設けなくても違法ではない。しかし、就業規則に退職金の規定を設けた場合は賃金の一部とみなされ、請求があった場合は支給しなければならない。(Wikipedia)

退職金とは賃金そのものです。何かお祝い金のようなイメージがありますが、正当な労働の対価です。会社は毎期、退職積立金を計上していますからね。賃金の一部を会社が積み立てているようなものでしょうか。

退職金は定年にならないと、満額もらえません。10年や20年働いた程度だと、本当にびっくりするくらい退職金は少ないですね。過去の早期退職の募集の際に、各人に退職金の額が知らされたんですが、桁を間違っているんじゃないかと思いましたね。

中途で会社を辞めると、退職金が減額されることは皆承知なので、あまりそのことで文句を言う人もいませんね。そういうものだから仕方ない、早く辞めた自分が悪いんだ、と言う感じで。だから皆定年まで働こうとします。定年まで働いて、ちゃんと退職金を満額もらって、老後を過ごそうと。

退職金とは逃走防止のための保釈金

でもね、おかしくないですか、これ?途中で会社をやめると、自分が働いて得た賃金がもらえないんですよ。会社が毎期積み立ててるのに、「途中で辞めたから」と言う理由だけで、賃金が没収されるんです。

退職金が「永年勤続を奨励する」意図をもって設けられているのは分かりますが、それは「奨励」ではなく、「脅迫」ですよね。中途退社に対するペナルティのように退職金が減額されます。懲戒処分でも受けたかのようです。

退職金とは、会社が社員の代わりに賃金を積み立てていると言うよりも、会社が中途退社を防ぐ目的で社員から人質代わりに徴収しているものです。

会社「お前、明日も逃げずに働くんだろうな」

労働者「もちろんです。その証拠にこのお金を預けておきます。もし逃げたらお金は返さなくてもいいです」

会社「分かった。この金は40年後に返してやる。途中で逃げ出したら、これは会社のものだからな」

労働者「分かりました。明日もがんばって働きます」

どこの犯罪集団なんでしょうか、会社って。お金の性質が被告人の逃走防止のための保釈金と同じですね。保釈金とは、被告人が逃走しないことを示すために人質代わりに裁判所に差し出すお金です。逃げずに出頭すれば全額返ってきますが、逃げれば返ってきません。それと全く同じですね。預けたお金が返ってくるのは、約束した労働力の提供が終わってからです。労働力の提供が終わると言うのは、労働者として使い物にならなくなると言う意味です。その期間は40年。40年の労働を終えるまでは、自分のお金であっても自由に使えません。パイレーツ・オブ・カリビアンかって話です。

それでも定年で退職金をもらうまで働くのか

じゃあ退職金制度を辞めればいいのか。退職金制度を辞めて、減った退職金の分だけ給料を増やせばプラマイ0で何の問題もないように思いますが、会社はそんな合理的なことをしません。退職金だけがなくなって、給料はそのままになるでしょうね。自分がもらえる退職金の額がどれくらいなのか多くの人は知らないでしょう。だから減らされても分からない。

将来的に退職金はなくなっていくと思います。もちろんその制度変更は労働者側に不利に働きます。今会社を辞めれば退職金が減額され、将来は退職金が正規に支払われるか分からない。八方ふさがりですね。でも、ひとつだけ妙案があります。早期退職加算金を勝ち取ることです。苦渋の選択を会社にさせることで、この奴隷労働から抜け出せます。

定年で退職金をもらった人は、おそらくその額の大きさにちょっとした興奮と、自分に対する慰労の念が混じった感覚を覚えるのだと思います。でもそれは本来支払われるべき賃金が、数十年後に支払われただけであって、「何でこんなに支払いが遅いのか」と感じるのが正しいのだと思います。それを数十年前に想定できているなら、数十年ただ働き続けるなんて、酔狂過ぎますね。私にはもう出来ないです。