早期退職はベーシックインカムの先取り

ベーシックインカム制度「創造性の基盤に」「地域版での実験を」(産経ニュース)

政府が毎月、国民に一定額の現金を無条件で支給する「ベーシックインカム」が世界各地で議論となっている。試験導入はフィンランドをはじめ、欧州や米国の一部地域で実施されている。急速に発達する人工知能(AI)が人々の職を代替すると予想され、人口減少や高齢化の進行とともに社会保障費は増え続ける。これらの課題の解決策となるか。

森永氏「『人の創造性』の基盤に」

「生活保護には、所得が増えると政府などの援助が減らされる『貧困のわな』がある。また、受給者は世間からとてつもなく冷たい目で見られる屈辱感を味わうだろう。ベーシックインカムで月10万円ほど一定して配布すれば、そういった問題は解決される。全員与えられるのだから、誰かが卑下することもなくなる。日本も、フィンランドなどの国々と同様に実験を含めた本格的な検討を始めるべきだ」

月に10万円。この収入を保障されるとどうなるのでしょうか。働かなくなるのでしょうか。

月に10万円もらえると言うことと、10万円を取り崩して行ける資産があると言うことはほぼ同じ意味ですよね。早期退職する人は、この程度の資産を持っているかもしれません。そういう人たちは、個人的にベーシックインカムを実現していると言えます。その結果はどうなっているでしょうか。働いている人もいれば、働かない人もいるでしょうね。働かない人がいると言う面を捉えれば、ベーシックインカムによって労働意欲は減退すると言えるのかもしれません。

でも大事なことは、働こうと思う人が働いて、働きたくないと思う人が働いていない状態と言うことだと思いますね。働かなくても生きていける状態で、ブラック企業で働き続ける人はいないと思います。嫌な仕事はしない。これを労働意欲の減退と言うのでしょうか。意欲の減退と言うより強制力の消滅、恐怖の消滅でしょう。今の会社はこの恐怖を使って労働を強いています。少々無理難題を行っても労働者は辞めないだろうと。誰も働かない社会と言うのは想像し難いですが、その労働の理由が恐怖にあるとしたら、正しい社会の在り方とは呼べないですね。

労働意欲が減退する恐れがある言うのは、つまり国民は労働意欲を持たなければならないと言う意味ですね。意欲を持つ義務があると。意欲なんて心の中の問題ですからね。それに義務を課すことの方がおかしい。働きたくない人でも普通に生活できる社会が理想だと思います。本当は、今の日本はそうなんですけどね。働かなくても餓死することはありません。ただ、餓死はしないけど、尊厳は踏みにじられたような状態になりますね。

働くことは義務ではなく、権利なんだと思います。生きていくだけなら生きていけるけど、もっとお金が欲しい、もっと名誉が欲しい、自己実現がしたい、そういうのを叶える手段が仕事をすることだと。生きていくだけなら生きていける、セミリタイアと言うのはそういう状態ですね。その状態で、なおかつ働こうとするのが本当の働く姿なんじゃないかなと。

ベーシックインカムと言うのは財源の問題があって、すぐには出来ないでしょうけど、将来的には何らかの形で実現するんじゃないかなと思います。働きたいとか、働きたくないとか個人の意思に関わらず生きていける社会が理想の社会、誰もが望んでいる社会だから。セミリタイアを指向する人はそれを先取りして実行している人なんだろうなと。労働を義務化するより、社会が幸せになるんじゃないかなと思いますね。