「残業代出ない『課長昇進はイヤ』は大間違い!」の記事の大きな間違い

残業代出ない「課長昇進はイヤ」は大間違い!働き方改革で激変する給与の裏側(NIKKEI STYLE)

働き方改革が進んでいます。残業を減らせ、という掛け声だけでなく、より具体的に残業しない働き方ができる取り組みが進んでいるのです。作業をサポートするツールが発展しているだけでなく、経営層が本気になって業務削減に取り組む例も増えてきました。

(略)

今まで残業代があるから、課長にならなくてもそれなりに満たされていた生活も、これからは残業そのものがなくなるので余禄がなくなるかもしれません。だから今以上の給与が欲しかったら、昇格を目指すしか方法がなくなるのです。

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しかし残業代の加算は今後ありえません。その前提で考えて、管理職昇格を目指さなくてよいのか、ということをじっくり考えてみてはいかがでしょう。

NIKKEI STYLEの記事です。

要約すると、働き方改革で残業がなくなる→昇進以外に給与を増やす方法はない→管理職昇格を目指そう、と言うことです。

何をか言わんや

この記事の「残業」とは、残業時間のことでしょうか、残業代のことでしょうか。残業時間が働き方改革などの掛け声でなくなると思っているのでしょうか。それとも高度プロフェッショナル制度の適用年収が下げられ、残業代と言うものがなくなると言う意味でしょうか。

前者なら理解不足も甚だしい。テレワークや在宅勤務で残業が減るわけがない。それで減るなら、電子メールが導入されたときに減っただろうし、文書作成が手書きからワープロに変わったときに減ったでしょう。携帯電話、コピー機、ファックス、電卓……数え上げたらきりがない。OA機器の導入で残業が減ったのでしょうか。もっと言えば、電車や車が発明されて仕事が減ったのか。過去数年を見ても、100年を見ても人の仕事量など、テクノロジーでは減りません。あまりにも自明のことです。

未来についても同じです。AIが発達しても、リニア新幹線ができても、どこでもドアができても同じ。人を奴隷のように扱う仕組みがなくならない限り、人間性を無視した「残業」などなくなりません

それとも後者、高度プロフェッショナル制度の適用年収が下げられ、残業代がなくなると言う意味なのでしょうか。課長クラス以下の一般労働者に、残業代のつかない無制限の労働を要求することが当然の社会になると言いたいのでしょうか。もしそうなら、そんな非人間的な労働環境を認めていいわけがない。この記事を書いたのは人事コンサルタントらしいですが、そんな環境が当たり前になるなら、課長に昇進することより、会社から脱出する道を探るのが、コンサルタントの仕事だと思いますね。

残業が減らないのは、一人にたくさん仕事をさせた方が得だからです。つまり残業代が安い。残業代は25%の割増しかない。この法定割増率をもっと増やせばいい。月に30万円の給料をもらっている人間には、会社としては約倍の60万円の人件費がかかります。改善策として例えば、月に40時間残業すると、人件費が2倍の120万円くらいになるように割増率を変えるのはどうでしょう。月に40時間残業すると、給料が90万円になる。無理な残業をさせるより人を雇った方が安くなるようにすれば、会社は本気で残業を減らそうとするんじゃないでしょうか。法定割増率を変えるだけです。できれば漸増する仕組みの方がいい。労働時間が増えると休息の時間が減るので、それを補償する意味合いも必要です。この案には何のテクノロジーも制度設計もいりません。すぐにできます。国のやる気だけです。

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