「『産まない幸せ』は勝手な考え」の時代錯誤感

「産まない幸せ」は勝手な考え(時事通信社)

自民党の二階俊博幹事長は26日、人口減少問題に関し「この頃、子どもを産まない方が幸せに(生活が)送れるのではないかと勝手なことを考えて(いる人がいる)」と述べた。

これ、私のことだな。女性に限った話ではないでしょうしね。

この失言で、総理を始めいろんな方面から叩かれてますね。

多分、二階さんの頭の中には、結婚して、家をローンで買って、子供を二人作って、奥さんは専業主婦で、旦那は定年まで働いて、その後は年金で生活すると言う、幸せな家庭のステレオタイプがあるのでしょう。

別にそういう考えを持つのは構いません。実際、そういう人もいますから。でも、そうじゃない人もいる。最近は、そうじゃない人が増えてきている。

定年までまだ時間があるのに、会社を早期退職で辞めてしまうなんてのも、その一例です。少し前では考えられなかったようなことが、普通の人の間で起きてます。結婚するかどうかや、子供を作るのかどうかとか、今まで常識的だと思えていたことが崩れ始めてます。

一般に価値観の多様化と言われてますが、旧来からの価値観がいきなり多様化したとも思えないんですね。価値観はもともと多様だった。でも、これまで社会規範で押さえつけられて、そうでないと思っていても言えなかった。言おうにも悶々としたうっぷんがあるだけで、論理的に説明することも、何かを決めて行動することもできなかった、と言う状態だったのではないでしょうか。それがこのネット社会の発達で、先に行動した人の意見や、説明できる人の言葉などを知ることができるようになって、一般の人たちの考え方も少しずつ変わっていったのでしょう。

私がセミリタイアなどと言う言葉を知ったのも数年前の話です。そんな考え方があるんだなと、ちょっと驚きましたね。パワハラやセクハラ、LGBT、働き方、夫婦の在り方、こういったものの考え方は10年前とは全然変わっています。価値観が自在に変わっていったと言うより、嫌なものを嫌だと言うようになった、もっと個人が自由に振舞うようになったと言った方が正しいかもしれません。

「勝手な考え」この言葉がそのまま、抑圧していると言う意味ですね。そして、人は抑圧しても構わないんだ、道徳的に正しい思想を教え込むためには力で押さえつけてもいいと言う考えが背景にありそうです。二階さんの発言は失言だと感じながらも、心情的に賛成してる世の大人たちもたくさんいそうです。

二階さんと日本の経営者がダブって見える。昭和のノスタルジーを恥ずかしげもなく口にする姿は、時代錯誤の経営者のよう。もっと目線を高く持たないとね。